50代に入った頃からでしょうか。食べる量は若い頃とそれほど変わらないのに、体重だけは正直で、少しずつ、確実に増えていく。頑張って運動しても、糖質を控えても、以前のような「結果」が出ない。そのたびに、どこかで自分を責めてしまう——そんな経験、きっと少なくないと思います。
正直、私もそうでした。「もっと努力しなきゃ」「意志が弱いのかな」と思い詰めたこともあります。でもある時、ふと痩せることより、健康でい続けることを優先してもいいんじゃないかと。
そもそも、なぜ痩せなければならないのか。
誰のために?何のために?そう問い直したとき、私は「痩せること」そのものを目標にするのを、いったんやめました。更年期に入ると、体の仕組みそのものが変わる。その現実を知ったことで、「どんなに頑張っても成果が出ない」あの苦しさは、努力不足ではなく、体の変化によるものだったのだと、少し肩の力が抜けたのです。
更年期に痩せにくくなる原因と背景
1. 基礎代謝の低下
50代を迎えると、「何もしなくても痩せていた」時代は、静かに終わりを迎えます。その大きな理由のひとつが、基礎代謝量の低下です。
基礎代謝とは、呼吸をしたり、体温を保ったり、生きるために最低限使われるエネルギーのこと。40代を境に、この基礎代謝は誰でも少しずつ下がっていきます。つまり、若い頃と同じ生活をしているだけでは、消費エネルギーが足りず、余った分が脂肪として蓄積されやすくなるのです。
2. 筋肉量の減少
年齢とともに筋肉量が減ることも、痩せにくさに直結します。筋肉はエネルギーを多く消費する組織なので、筋肉が減れば、それだけ「燃えにくい体」になります。
特に下半身の筋肉は、全身の筋肉量の中でも大きな割合を占めています。ここが衰えると、歩くスピードが遅くなったり、疲れやすくなったりと、日常生活にも影響が出てきます。
3. ホルモンバランスの変化
更年期を語るうえで欠かせないのが、ホルモンの変化です。女性ホルモンの分泌が減少すると、脂肪がつきやすくなり、筋肉が落ちやすくなる傾向があります。
さらに、成長ホルモンの分泌量も年齢とともに減少します。成長ホルモンには、脂肪を分解し、筋肉量を維持する働きがありますが、50代になるとその恩恵を受けにくくなるのです。
4. 「〇〇だけダイエット」が続かない理由
更年期に入ってから、「〇〇だけ食べる」「〇〇を完全に抜く」といった極端なダイエットが続かないのは、意志の問題ではありません。体に必要な栄養が不足すれば、体は防御反応としてエネルギーを溜め込もうとします。
結果として、痩せないどころか、体調を崩したり、気分が落ち込んだりすることも。美味しいものを楽しみ、やりたいことを続けるためには、まず健康でいること。その前提を忘れないことが大切だと感じています。
痩せるより「健康で動ける体」を目指す工夫
1. 筋トレがもたらす変化
更年期以降の体づくりで、避けて通れないのが筋トレです。筋トレというとハードルが高く感じるかもしれませんが、目的はムキムキになることではありません。
筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、日常生活での消費エネルギーも自然と増えます。また、筋トレを行うことで成長ホルモンの分泌が促され、脂肪が燃えやすい体づくりにつながります。
2. 生活習慣病の予防という視点
筋トレは、体型のためだけのものではありません。血糖値のコントロールや血流改善にも役立ち、生活習慣病の予防という面でも重要です。
50代はまだ働き盛りで、つい自分の健康を後回しにしがちな年代。でも、この時期の積み重ねが、10年後、20年後の体をつくると思うと、無理のない範囲での運動は「将来への投資」だと感じます。
3. 気分の落ち込みへの影響
筋トレを含む運動を25分ほど続けると、セロトニンと呼ばれるホルモンの分泌が促されると言われています。セロトニンは、気分の安定に関わる大切な存在。
更年期は、体だけでなく心も揺らぎやすい時期。運動が、体重よりも先に「気持ち」を支えてくれることもあります。
50代から始めやすい筋トレの考え方
無理をしないことが最優先
50代は「体力・筋力の曲がり角」と言われます。何もしなければ衰えていく一方ですが、逆に言えば、今からでも十分に取り戻せる時期でもあります。
大切なのは、いきなり完璧を目指さないこと。毎日少しずつでも続けることが、結果的に一番の近道になります。
フォームと準備を大切に
ウォーミングアップを行い、正しいフォームを意識することは、怪我を防ぐだけでなく、運動の効果を高めるためにも欠かせません。回数よりも、体の感覚を大切にする意識が重要です。
食事は「減らす」より「選ぶ」
単品より定食を意識する
外食やお弁当が多くなりがちな40〜50代ですが、選び方次第で栄養バランスは整えられます。麺類や丼ものなどの単品より、複数のおかずがある定食を選ぶ。それだけでも、体への負担は変わってきます。
たんぱく質とカルシウムを意識
筋肉や骨を支えるために、たんぱく質とカルシウムは意識して摂りたい栄養素です。肉や魚、大豆製品、乳製品を、無理のない範囲で日常に取り入れることがポイントです。
ビタミンDと日光
魚に多く含まれるビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨や筋肉を支えてくれます。完全に日光を避けるのではなく、短時間でも外に出て体を動かすことが、結果的に心身のリズムを整えてくれます。
まとめ|痩せなくても、ちゃんと前に進んでいる
更年期の痩せにくさは、怠けや根性不足の問題ではありません。
基礎代謝の低下、筋肉量の減少、ホルモンの変化——そのどれもが、自然な体の変化です。
だからこそ、「痩せること」だけに囚われず、健康で動ける体を保つことに目を向けてみてください。美味しいものを楽しみ、やりたいことを続けるための体づくり。その延長線上に、今の自分なりの心地よさが見つかるかもしれません。
私は、痩せることをあきらめました。でも、健康でいることは、あきらめていません。正直、それでいいと思っています。